地理教科書 82ページ 2 ヨーロッパ統合の動き


学習課題
ヨーロッパでは統合によって産業や人々の生活にどのような変化がみられるでしょうか。

国境をこえた統合
ヨーロッパでは、18世紀にいち早く工業を発展させたイギリスをはじめ、フランスやドイツなどでも鉄鋼業や機械工業といった近代的な工業が発展しました。
しかし、20世紀以降はアメリカ合衆国が大きく発展し、ヨーロッパはこうした国に対抗する必要が出てきました。
第二次世界大戦後、国をまたがる石炭や鉄鉱石の共同利用などの協力が始まりました。
この背景には、これ以上ヨーロッパで戦争を起こさないという思いもありました。
1967年に発足したヨーロッパ共同体(EC)は、1993年にEUへと発展し、2002年には共通通貨のユーロが導入され、統合が進みました。
EUの結び付きはさまざまな面で強まっており、世界の経済や政治に大きな影響をあたえています。

ヨーロッパの統合と産業
産業におけるヨーロッパ統合は航空機の生産に表れています。
フランス、イギリス、ドイツなどの企業が共同で企業を設立し、国境をこえた技術協力を行っています。
この企業が生産した航空機は、世界の航空会社で使われています。
EUに加盟する国の間では輸入品にかかる関税がかからないため、地価や賃金の安い東ヨーロッパなどに工場を移す企業も増えています。
また、ヨーロッパ全体で交通網が整備されており、農産物や工業製品の輸出入が活発にできるようになっています。

統合で変わる人々の生活
ヨーロッパで統合が進む中で、人々が移動するための交通網も整備が進み、ロンドンとパリを結ぶユーロスターなどの国境をこえる高速鉄道や、高速道路、航空路線も充実し、外国への移動が便利になっています。
多くのEU加盟国間の国境では、パスポートの検査がなく、通過が自由です。
ヨーロッパでは、国境をこえて通勤や買い物をする人たちが多く見られます。
賃金の高い国や地域に働きに出たり、価格が安く品ぞろえの良い国へ買い物に出かけています。
ヨーロッパでは、多くの人々がバカンスという長期休暇を取って旅行に出かけます。
地中海沿岸やアルプス山脈は人気のある長期滞在の目的地です。
週末に旅行する人々も多くおり、観光業はヨーロッパの重要な産業になっています。

Move Move
授業


では、今日の授業を始めます。
今日の学習課題は、ヨーロッパでは、統合によって産業や人々の生活にどのような変化が見られるのかです。
ただ覚えるのではなく、なぜそうなったのかをしっかり考えながら学んでいきましょう。

まず、写真 1 を見てください。
チェコとオーストリアの国境の写真です。
自転車に乗った人が、そのまま国境をこえていますね。
ここで考えてみてください。、国と国の境なのに、なぜ止められないのでしょうか?
昔は国境に検問所があり、パスポートの確認が必要でした。
しかし今はそれがなくなり、自由に行き来できるようになっています。
これは、ヨーロッパの国々が統合しているからです。

次に地図 2 を見てください。
EUに加盟している国が広がっている様子がわかりますね。
多くの国がまとまって、一つのグループのようになっています。
なぜこのように多くの国がまとまったのでしょうか。ここが大切なポイントです。

では本文を読みながら考えていきます。
ヨーロッパでは、イギリスなどを中心に早くから工業が発達しました。
しかし20世紀になると、アメリカ合衆国が大きく発展しました。
ヨーロッパの国々は一つ一つでは力が弱く、世界の競争に勝てなくなってきました。
そのため、国どうしが協力して大きな力を持つ必要が生まれました。
このように、他の大きな国に対抗するために統合が進められたのです。

さらにもう一つ大きな理由があります。
ヨーロッパではこれまで戦争が多く起こってきました。
その反省から、国どうしが協力すれば争いが起こりにくくなると考えられました。
つまり、戦争を防ぐために統合が進められたのです。

その結果、1967年にECができ、1993年にEUへと発展しました。
さらに2002年には共通通貨のユーロが導入されました。
通貨が同じになると、お金の交換が必要なくなり、取引がしやすくなります。

3 のグラフ(EUとアメリカ合衆国・日本の比較)を見てください。
EUは面積・人口・GDPが大きいことがわかります。
多くの国がまとまることで、一つの大きな経済のかたまりになりました。
そのため、世界に強い影響を持つようになったのです。

次に図 4 を見てください。
航空機がいくつかの国で分担して作られていることがわかります。
これは、それぞれの国が得意な技術を持っているからです。
国境をこえて協力することで、効率よく質の高い製品を作ることができるようになりました。
このような生産のしかたを国際分業といいます。

では次に、人々の生活の変化を見ていきます。
本文には、EUの国の間では関税がかからないと書かれています。
関税がなくなると、物を自由に売り買いできるようになります。
そのため、企業は賃金の安い地域に工場を移しやすくなりました。
結果として、ヨーロッパ全体で生産が効率よく行われるようになりました。

さらに、交通にも注目してください。
ユーロスターのような高速鉄道や道路が整備されています。
これは、人や物の移動をスムーズにするためです。
その結果、外国への移動がとても便利になりました。

もう一度写真 1 を思い出してください。
国境で止められないのは、パスポート検査がなくなったからです。
そのため、人々は国境をこえて通勤や買い物をするようになりました。
賃金が高い国に働きに行ったり、安い国へ買い物に行ったりしています。

次に、写真 7 を見てください。
地中海の海岸で多くの人がくつろいでいますね。
ヨーロッパではバカンスという長期休暇を取り、旅行を楽しむ人が多いです。
移動が簡単になったことで、観光が盛んになりました。

さらにグラフ 8 を見ると、フランスやスペインなどヨーロッパの国が多くの観光客を受け入れていることがわかります。
これは、移動しやすくなったことと、魅力的な観光地が多いことが理由です。
その結果、観光業が重要な産業になりました。

では最後にまとめます。
ヨーロッパは、他の大国に対抗するためと、戦争を防ぐために統合を進めました。
その結果、経済が大きくなり、国際分業が進み、人や物の移動が自由になりました。
さらに、生活も変化し、通勤や買い物、旅行が国境をこえて行われるようになりました。

確認問題です。
① ヨーロッパが統合を進めた理由を2つ説明しなさい。
② EUで使われている共通通貨の名前を書きなさい。
③ 統合によって人々の生活がどのように変化したかを説明しなさい。

確認問題の答えを一緒に確認していきましょう。

① ヨーロッパが統合を進めた理由を2つ説明しなさい。
答え:
ヨーロッパの国々は、一つ一つでは力が弱く、アメリカ合衆国のような大きな国に対抗できなくなったため、協力して大きな力を持つ必要があったからです。
また、これまで戦争が多く起こっていたため、国どうしが協力することで戦争を防ごうと考えたからです。

② EUで使われている共通通貨の名前を書きなさい。
答え:ユーロ

③ 統合によって人々の生活がどのように変化したかを説明しなさい。
答え:
国境での検査がなくなり、自由に国を行き来できるようになったため、他の国へ通勤したり、安い国へ買い物に行ったりするようになりました。
また、交通網が発達したことで移動が便利になり、旅行がしやすくなって観光業も発達しました。

このように、「なぜそうなったのか」と「その結果どうなったのか」をつなげて説明できることが大切です。 今日は、なぜそうなるのかを考えながら学びました。
理由と結果を結びつけて説明できるようにしていきましょう。

ヨーロッパの自然・言語分布(地図問題)

Q1. ヨーロッパで広く信仰されている宗教は何か。
答え
キリスト教
【解説】地図や本文から、ヨーロッパではキリスト教が広く信仰されていることがわかる。宗教は文化や生活にも大きな影響を与えており、クリスマスなどの行事とも深く関係している。

Q2. 地図中のAの地域にはフランスやイタリアなどが含まれている。この地域で使われる言語の系統を答えなさい。
答え
ラテン系言語
【解説】フランス語・イタリア語・スペイン語などは、古代ローマのラテン語をもとにしたラテン系言語である。南ヨーロッパや西ヨーロッパに多いことを地図とセットで覚える。

Q3. 地図中のBの地域にはイギリスやドイツなどが含まれている。この地域で使われる言語の系統を答えなさい。
答え
ゲルマン系言語
【解説】英語やドイツ語はゲルマン系言語に分類される。北西ヨーロッパに広がっていることを地図で確認しながら覚えると理解が深まる。

Q4. 地図中のCの地域にはロシアなどが含まれている。この地域で使われる言語の系統を答えなさい。
答え
スラブ系言語
【解説】ロシア語やポーランド語などはスラブ系言語であり、東ヨーロッパに多く分布している。地域と言語の関係が重要なポイントである。

Q5. 地図中のXの半島に見られる、氷河によって削られてできた複雑な海岸地形を何というか答えなさい。
答え
フィヨルド
【解説】北ヨーロッパ(特にノルウェー)では、氷河の侵食によってできたフィヨルドが見られる。地形問題として頻出であるため、場所とセットで覚えること。

Q6. ヨーロッパの気候が、緯度が高いわりに温暖である理由を、地図中のYの海流とZの風の名称を使って説明しなさい。
答え
北大西洋海流と偏西風が寒さを和らげているから
【解説】ヨーロッパは高緯度にあるが、暖流である北大西洋海流偏西風が暖かい空気を運ぶため、気候が温暖になる。記述問題でよく出る重要ポイントである。

ヨーロッパ統合とEU

Q7. 第二次世界大戦後、ヨーロッパで経済協力を目的として発足した組織を何というか答えなさい。
答え
EC(ヨーロッパ共同体)
【解説】ヨーロッパでは戦争の反省から協力関係が進み、まずEC(ヨーロッパ共同体)が発足し、その後EUへと発展した。

Q8. 地図を見て、EC発足時に加盟していなかった国を、フランス・スペイン・イタリアの中から1つ選びなさい。
答え
スペイン
【解説】EC発足当初の加盟国は西ヨーロッパの一部に限られており、スペインは後から加盟した国である。地図の「EC発足当時の加盟国」の範囲を確認することが重要。

Q9. EUに2004年以降に加盟した国は、東ヨーロッパと西ヨーロッパのどちらに多いか答えなさい。地図
答え
東ヨーロッパ
【解説】2004年以降のEU拡大では、旧社会主義圏を含む東ヨーロッパの国々が多く加盟した。地図の色分けを読み取る力が問われる。

Q10. 他国に通勤したり買い物に行く人が多く見られるのは、EUのどのような仕組みによるものか。「国境」という語を用いて答えなさい。
答え
国境を自由に通過できる仕組み
【解説】EUでは加盟国間で国境の自由な通過が可能であり、人や物の移動が活発になっている。この仕組みはEUの大きな特徴である。

Q11. EUの人口は日本の人口の約何倍か、グラフをもとに整数で答えなさい。
答え
約4倍
【解説】グラフではEUの人口は約5.2億、日本は約1.2億である。よって約4倍となる。グラフの数値を比較する問題は頻出である。

Q12. EU・アメリカ合衆国・日本のうち、一人あたりのGDPが最も高いのはどこか答えなさい。グラフ
答え
アメリカ合衆国
【解説】グラフより、一人あたりGDPはアメリカ合衆国が最も高い。単なる暗記ではなく、資料を読み取る力が必要。

Q13. グラフから読み取れる、EUとしてヨーロッパが統合する利点を、「大国」「対抗」の語句を使って説明しなさい。
答え
1つ1つの国は小さくても、大国に対抗できる
【解説】EUは複数の国がまとまることで、経済規模が大きくなり、アメリカなどの大国に対抗できるようになる。統合の意義を理解する重要な記述問題である。