地理教科書 84ページ 3 持続可能な社会に向けて


学習課題
ヨーロッパでは、環境問題を改善するために、どのような取り組みが行われているでしょうか。

ヨーロッパの環境問題
ヨーロッパでは、19世紀からの工業の発展により、工場からの排水や排気で、河川や大気が汚染される問題が国境をこえて起こりました。
酸性雨もその一つです。
20世紀末ごろからは、異常気象が相次ぎ、豪雨による災害などがたびたび問題になっています。

国をこえた環境への取り組み
河川や大気の汚染や、地球温暖化などの環境問題への対応には、国をこえた協力体制が必要であり、EUでは共通の取り組みを行っています。
ライン川のような、複数の国が飲料水や工業用水、輸送路として利用する国際河川では、利用する国々が協力して汚水処理施設の設置や、工場からの排水の規制を行ったことで、水質が改善されてきています。
地球温暖化の原因になる、温室効果ガスの排出をなくす脱炭素社会を実現するために、EU加盟国では、火力や原子力にかわる、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電も、積極的に進められています。
人々の日常生活でも、環境への配慮が行われており、ごみは厳しく分別されています。
リサイクル率は高く、家庭の電化製品のリサイクルなどは、加盟国が共同で取り組んでいます。
大気汚染や交通渋滞の対策として、中心部への自動車の乗り入れを制限している都市もあります。
こうした都市では、駐車場や自転車専用道路が整備され、多くの人々が積極的にパークアンドライドを活用し、自転車などで通勤しています。
このように、ヨーロッパでは、持続可能な社会を目指す取り組みが積極的に行われています。

自然環境を生かした観光
ヨーロッパでは、海岸やスキー場のような整備されたリゾート地だけではなく、静かな農村に滞在し環境に優しい観光をする人々が増えています。
農村では、畑や森林の風景を見ながら散策したり、地元の食物を楽しんだりする観光が盛んです。
そのため、EUは、農薬の使用量を減らすといった、環境に配慮している農家に対して補助金を出すなど、農業や農村を持続する取り組みを重視しています。
国立公園などで自然を学習しながら楽しむエコツーリズムも、環境に配慮した、持続可能な観光として人気があります。

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授業


では、今日の授業を始めます。
今日の学習課題は「ヨーロッパでは、環境問題を改善するためにどのような取り組みが行われているのか」です。
ただ覚えるのではなく、「なぜその取り組みが必要なのか」を考えながら学びましょう。

まず、写真 1 を見てください。
たくさんの風車が並んでいますね。
ここで考えてみてください。「なぜこの場所に風車が多くあるのでしょうか?」
ヨーロッパは平地が広く、風がよく吹く地域が多いです。
そのため、風の力を利用した発電がしやすいのです。
つまり、自然環境の特徴を生かして再生可能エネルギーを利用していることがわかります。

次に写真 2 を見てください。
木が立ち枯れている様子が見えますね。
これは酸性雨の影響と考えられています。
ここで考えましょう。「なぜこのような被害が起こったのでしょうか?」
工場から出る煙やガスが空気を汚し、それが雨に混ざることで森林に被害を与えたのです。

では本文を読んでいきます。
ヨーロッパでは、19世紀の工業の発展によって、工場からの排水や排気が増えました。
その結果、川や空気が汚されるようになりました。
この汚染は国境をこえて広がるため、一つの国だけでは解決できません。
そのため、国どうしが協力する必要が出てきました。
このように、環境問題が国境をこえて広がるため、国際的な協力が必要になったのです。

さらに、地球温暖化も問題になっています。
温室効果ガスが増えることで、気温が上がり、異常気象や災害が増えました。
そのため、温室効果ガスを減らす取り組みが必要になりました。

ここで、グラフ 3 (再生可能エネルギーによる発電量)を見てください。
ヨーロッパでは再生可能エネルギーの割合が増えていることがわかります。
これは、環境に負担の少ないエネルギーを使うようにしているからです。
その結果、地球温暖化の原因となるガスの排出を減らそうとしているのです。

次に、生活の中での取り組みを見ていきます。
ヨーロッパでは、ごみが細かく分別されています。
分別することでリサイクルしやすくなり、資源を無駄にしないようにしています。
その結果、環境への負担を減らすことができます。

さらに、都市での取り組みも重要です。
写真 4 と図 5 を見てください。
これはパークアンドライドというしくみです。
郊外に車をとめて、そこから電車に乗り換えて中心部に行きます。
なぜこのような方法をとるのでしょうか。
車の数を減らすことで、交通渋滞や大気汚染を減らすことができるからです。

また、写真 6 では自転車専用道路を利用する人々が見られます。
自転車を使うことで、車よりも環境への負担が少なくなります。
そのため、多くの人が環境にやさしい移動手段を選んでいます。

次に観光について考えてみましょう。
写真 7 では自然の中でハイキングを楽しむ人々がいます。
ヨーロッパでは、自然を守りながら観光を行うエコツーリズムが広がっています。
自然を大切にしながら観光することで、環境を守ることができるのです。

さらに、農業でも工夫がされています。
農薬の使用を減らすなど、環境に配慮した農業が進められています。
これは、自然を守りながら農業を続けるためです。

では最後にまとめます。
ヨーロッパでは、工業の発展によって環境問題が起こりました。
その問題が国境をこえて広がるため、国どうしが協力して対策を進めています。
再生可能エネルギーの利用や、ごみの分別、交通の工夫などによって、環境への負担を減らしています。
このような取り組みは、持続可能な社会を実現するために行われています。

確認問題です。
① ヨーロッパで起こっている環境問題はどのようなものですか。
② 再生可能エネルギーとはどのようなエネルギーか説明しなさい。
③ パークアンドライドはなぜ行われているのか説明しなさい。

確認問題の答えを確認していきましょう。

① ヨーロッパで起こっている環境問題はどのようなものですか。
答え:
工場からの排水や排気による大気汚染や水質汚染、そして酸性雨地球温暖化などがあります。

② 再生可能エネルギーとはどのようなエネルギーか説明しなさい。
答え:
風力や太陽光などの自然の力を利用してつくられ、使ってもなくならず、環境への負担が少ないエネルギーのことです。

③ パークアンドライドはなぜ行われているのか説明しなさい。
答え:
都市の中心部に入る車の数を減らすことで、交通渋滞や大気汚染を防ぐために行われています。
郊外に車をとめて鉄道に乗り換える方法が使われています。

このように、「なぜその対策が必要なのか」と「どんな結果になるのか」をセットで説明できることが大切です。

ヨーロッパの環境問題と持続可能な社会

Q1. 19世紀以降、ヨーロッパでは工業の発展によって国境をこえる環境問題が起こった。森林が立ちがれする原因の一つと考えられている環境問題を答えなさい。
答え
酸性雨
【解説】工業が発達すると、工場や発電所などから出る有害な物質が大気中に広がり、雨にとけこんで酸性雨となることがある。酸性雨は森林を傷めたり、湖や土壌にも悪い影響を与えたりする。国境をこえて広がるため、1つの国だけでは解決しにくい問題である。 :contentReference[oaicite:0]{index=0}

Q2. ライン川のように、複数の国を流れ、利用する国々が協力して水質改善に取り組む河川を何というか答えなさい。
答え
国際河川
【解説】ライン川は1つの国だけを流れる川ではなく、いくつもの国と関わる川なので国際河川という。国際河川では、上流の国の水の使い方や汚染が下流の国にも影響するため、関係する国どうしの協力がとても重要になる。ヨーロッパでは、こうした国際的な協力によって環境を守ろうとしている。

Q3. 地球温暖化の原因となる気体の排出を減らして、目指されている社会を何というか答えなさい。
答え
脱炭素社会
【解説】地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスが増えることで進む。そこで、これらの排出をできるだけ減らし、化石燃料に頼りすぎない社会をつくろうとする考え方が脱炭素社会である。ヨーロッパでは環境を守るため、この取り組みが積極的に進められている。

Q4. 地球温暖化の原因として特に重視され、脱炭素社会の実現のために排出を減らそうとしている気体を答えなさい。
答え
二酸化炭素
【解説】工場・発電・自動車などから多く出る二酸化炭素は、地球温暖化の大きな原因の一つである。そのため、二酸化炭素の排出を減らすことが、環境問題の対策として非常に重要になる。問題では「地球温暖化」「排出をなくす」「脱炭素社会」という言葉と結びつけて覚えておくとよい。

Q5. 風力や太陽光のように、くり返し利用でき、環境への負担が比較的小さいエネルギーを何というか答えなさい。
答え
再生可能エネルギー
【解説】太陽光・風力・水力などは、使ってもすぐになくなるわけではないため再生可能エネルギーとよばれる。石油や石炭などの化石燃料と比べて、二酸化炭素の排出を少なくできる点が大きな特徴である。ヨーロッパでは、脱炭素社会を目指してこの利用が進められている。

Q6. 駅前の駐車場に車を止め、その後は鉄道などの公共交通機関を利用して都心へ向かう仕組みを何というか答えなさい。
答え
パークアンドライド
【解説】パークアンドライドは、車を使う区間を短くし、都心部では電車などを使うことで、大気汚染や交通渋滞を減らそうとする方法である。環境対策と交通対策を同時に進められるので、ヨーロッパの都市でよく見られる。図とセットで出題されやすい重要語句である。

Q7. ヨーロッパで、環境問題への対策を進めながら目指している社会を何というか答えなさい。
答え
持続可能な社会
【解説】今の生活を続けながらも、将来の人々が困らないように環境や資源を守っていく社会を持続可能な社会という。ヨーロッパでは、再生可能エネルギーの活用や交通の工夫などを通して、この実現を目指している。意味までしっかり理解しておくことが大切である。

Q8. 農村に滞在し、環境にやさしい観光をしたり、国立公園などで自然を学びながら楽しんだりする観光を何というか答えなさい。
答え
エコツーリズム
【解説】自然を守りながら、その地域の環境や文化について学ぶ観光をエコツーリズムという。観光を楽しむだけでなく、自然保護の大切さを知ることも目的である。ヨーロッパでは、持続可能な社会に向けた観光のあり方として注目されている。

ヨーロッパ統合がかかえる課題

Q9. EU諸国がかかえる課題の一つとして、2004年以降にEUに加盟したどの地域の国々と、それ以前から加盟していたどの地域の国々との経済格差が目立つか。2004年以降に加盟した側の地域名を答えなさい。
答え
東ヨーロッパ
【解説】2004年以降にEUへ加盟した国々には、旧社会主義国を多く含む東ヨーロッパの国が多い。これらの国々は、それ以前から加盟していた西ヨーロッパの国々と比べて平均賃金などに差があり、それがEU内の課題となっている。 :contentReference[oaicite:8]{index=8}

Q10. EU諸国がかかえる課題の一つとして、2004年以降に加盟した東ヨーロッパの国々と格差が目立つ、それ以前から加盟していた地域名を答えなさい。
答え
西ヨーロッパ
【解説】EUは統合が進んでいるが、すべての国の経済水準が同じではない。特に、古くから加盟していた西ヨーロッパの国々と、後から加盟した東ヨーロッパの国々のあいだで格差が見られる。EUの課題は「統合が進むほど、差も見えやすくなる」と理解するとよい。

Q11. EU加盟国どうしで対立の原因となった、加盟国が分担して受け入れることをめぐって問題になったものを答えなさい。
答え
難民
【解説】戦争や貧困などで国を追われた人々を難民という。EUでは多くの国が難民を受け入れているが、どの国がどれだけ受け入れるかという負担をめぐって加盟国間の対立が起こった。人道的な問題であると同時に、政治的な課題でもある。

Q12. 2020年1月にEUを離脱した国を答えなさい。
答え
イギリス
【解説】EUの統合が進む一方で、加盟国の考え方の違いもあり、2020年1月にはイギリスがEUを離脱した。これは「ブレグジット」ともよばれ、EUの今後を考えるうえで重要なできごとである。年号と国名をセットで覚えておくとテストで役立つ。

西ヨーロッパの産業と人々の移動

Q13. 西ヨーロッパの国々で、1980年代以降に航空機や医薬品などを中心に大きく成長した産業を答えなさい。
答え
先端産業
【解説】西ヨーロッパでは、昔からの工業だけでなく、航空機・医薬品などの高度な技術を必要とする先端産業が成長した。これは、技術力や研究開発力の高まりと関係している。ロンドンやパリなどの大都市に産業が集中していることもあわせて覚えるとよい。 :contentReference[oaicite:12]{index=12}

Q14. EUの地域内では人々の移動が比較的自由であるため、賃金の高いドイツなどで増加している人々を何というか答えなさい。
答え
外国人労働者
【解説】EU内では国境をこえた移動がしやすいため、仕事を求めてほかの国へ移る人が増えている。特に賃金の高い国では外国人労働者が増加している。EU統合は、人や物の自由な移動を進める一方で、働く人の移動にも大きな影響を与えている。

Q15. フランスのように、アルジェリアなど、昔その国に支配されていた地域からの移民が多い国がある。このような支配されていた地域を何というか答えなさい。
答え
植民地
【解説】ヨーロッパの国々は、昔アジアやアフリカなどに多くの植民地を持っていた。そのため、独立後も旧植民地とのつながりが残り、そこからの移民が多い国がある。フランスとアルジェリアの関係はその代表例である。歴史と現在の人口移動が結びついている点が重要である。

Q16. EUの多くの国で受け入れているが、差別や排除の動きも見られ、深刻な問題となっている人々を答えなさい。
答え
難民
【解説】戦争や迫害、貧困などから逃れてきた難民を、EUの多くの国が受け入れている。しかし、受け入れに反対する声や差別・排除の動きもあり、大きな社会問題になっている。人権の問題と国の負担の問題の両方として考えることが大切である。

Q17. ドイツに多くのケバブの屋台が見られる理由として、教科書の答えにある内容をそのまま答えなさい。
答え
トルコから多くの労働者が移住したから。
【解説】ドイツには、仕事を求めてトルコから多くの労働者が移住してきた歴史がある。そのため、トルコ料理であるケバブの屋台が多く見られる。食文化の広がりは、人の移動と深く関係していることがわかる。