国語教科書 36ページ 枕草子

朗読
現代訳
春は明け方。
だんだんと白んでいく山ぎわが、少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいているのは風情がある。
夏は夜。
月の頃は言うまでもないが、闇もやはり、蛍が多く飛びかっているのがよい。
また、ほんの一、二匹ほのかに光って飛んでいくのも趣がある。
雨などが降るのもいい。
秋は夕暮れ。
夕日が差して山の端にとても近づいた頃に、鳥がねぐらへ行くというので、三、四羽、二、三羽などと飛び急ぐことまでもしみじみとしたものを感じさせる。
まして、雁などが列を作っているのが、たいそう小さく見えるのはたいへんおもしろい。
日がすっかりしずんでしまって、風の音、虫の音などがするのも 、これもまた、言いようもないほど趣深い 。
冬は早朝。
雪が降っているのは、言うまでもない。
霜が真っ白なのも、またそうでなくても、たいそう寒いときに、火などを急いでおこして、炭を持って廊下などを 通っていくのも、たいへん似つかわしい。
昼になって、だんだん暖かくなって寒さが ゆるんでいくと、火桶の火が白い灰ばかりになって、好ましくない。
かわいらしいもの。
瓜に描いてある幼児の顔。
雀の子が、ねずみの鳴きまねをして呼ぶと、踊るようにやって来る様子。
二、三歳ほどの幼児が、急いではってくる途中に、とても小さいごみがあったのを目ざとく見つけて、愛らしい指でつまんで、大人たち一人一人に見せている様子はとてもかわいらしい。
髪はあまそぎにしている幼女が、目に髪がかかっているのをかき払わずに、顔を傾けて物などを見ているのも、かわいらしい。
月のとても明るい夜に牛車で川を渡ると、牛が歩くにつれ、水晶などが割れたように水が飛び散るのは趣深いものだ。
授業
今回は、枕草子の現代訳を使って、「どのような情景がえがかれているのか」を考えていきます。
ただ読むだけでなく、「頭の中で映像にできるか」を大切にしていきましょう。
では、最初の部分から見ていきます。

春は明け方。
だんだんと白んでいく山ぎわが、少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいているのは風情がある。
この場面は、夜から朝に変わる瞬間です。
まだ太陽はしっかり出ていませんが、空が少しずつ明るくなっていきます。
山の向こうがうっすら光り、そこに細い紫の雲が流れています。
静かで、ゆっくりと時間が動いている様子が見えてきます。
ここで大切なのは、「はっきり明るい朝」ではなく、「変わっていく途中の美しさ」です。

夏は夜。
月の頃は言うまでもないが、闇もやはり、蛍が多く飛びかっているのがよい。
また、ほんの一、二匹ほのかに光って飛んでいくのも趣がある。
雨などが降るのもいい。
ここは暗い夜の場面です。
その中で、蛍の光が動いています。
たくさん飛んでいる様子はにぎやかですが、一、二匹だけ光る様子は静かで落ち着いた美しさがあります。
さらに雨が降ることで、しっとりとした空気になります。
暗さの中で光や音が引き立つ、そんな世界です。

秋は夕暮れ。
夕日が差して山の端にとても近づいた頃に、鳥がねぐらへ行くというので、三、四羽、二、三羽などと飛び急ぐことまでもしみじみとしたものを感じさせる。
まして、雁などが列を作っているのが、たいそう小さく見えるのはたいへんおもしろい。
日がすっかりしずんでしまって、風の音、虫の音などがするのも 、これもまた、言いようもないほど趣深い 。
ここは夕方から夜になる場面です。
太陽が沈もうとする中で、鳥たちが急いで帰っていきます。
その様子に、少しさみしい気持ちが出てきます。
さらに、雁が遠くに小さく見えることで、広い空間も感じられます。
日が沈んだあとは、目で見るものが減り、耳で感じる世界になります。
風や虫の音が、秋らしい落ち着いた雰囲気を作っています。

冬は早朝。
雪が降っているのは、言うまでもない。
霜が真っ白なのも、またそうでなくても、たいそう寒いときに、火などを急いでおこして、炭を持って廊下などを通っていくのも、たいへん似つかわしい。
昼になって、だんだん暖かくなって寒さがゆるんでいくと、火桶の火が白い灰ばかりになって、好ましくない。
ここは冬の朝です。
空気が冷たく、景色が白く見えます。
その中で、人が火をおこして炭を運んでいます。
寒さの中での人の動きが、冬らしさを感じさせます。
しかし昼になると暖かくなり、その雰囲気がこわれてしまいます。
つまり、一番よいのは「寒くて張りつめた朝の時間」だということです。

ここまでで分かることは、季節ごとに「一番美しい時間」がえらばれているということです。
春は朝、夏は夜、秋は夕方、冬は朝というように、それぞれ違います。
時間の変化の中の一瞬をとらえていることが大切です。

次に、第145段を見ていきます。

かわいらしいもの。
瓜に描いてある幼児の顔。
雀の子が、ねずみの鳴きまねをして呼ぶと、踊るようにやって来る様子。
二、三歳ほどの幼児が、急いではってくる途中に、とても小さいごみがあったのを目ざとく見つけて、愛らしい指でつまんで、大人たち一人一人に見せている様子はとてもかわいらしい。
髪はあまそぎにしている幼女が、目に髪がかかっているのをかき払わずに、顔を傾けて物などを見ているのも、かわいらしい。
ここではテーマが変わり、「かわいらしさ」に注目しています。
共通しているのは、小さくて、自然で、作られていないしぐさです。
子どもがごみを見つけてうれしそうに見せる様子は、大人から見るととてもほほえましいです。
また、髪が目にかかっても気にしない様子も、無意識だからこそかわいらしく見えます。
つまり、自然な動きの中にあるかわいさを感じ取っています。

最後に、第215段です。

月のとても明るい夜に牛車で川を渡ると、牛が歩くにつれ、水晶などが割れたように水が飛び散るのは趣深いものだ。
ここは夜の場面です。
月の光がとても明るく、川の水にも光が当たっています。
牛が歩くことで水がはね、その水が光ってきらきらします。
それを水晶が割れたようだと表現しています。
静かな夜の中で、一瞬きらっと光る動きが強く印象に残ります。

今日のまとめです。
この作品では、特別な出来事ではなく、日常の中の一瞬がえがかれています。
時間の変化、光、音、動きに注目して読むことが大切です。
そして、それを見て「美しい」「よい」と感じる心が、この作品の中心です。
これを意識して読むと、情景がはっきり見えるようになります。
1
ぴたトレ 要点チェック
枕草子
清少納言
p.26
1
新出漢字の読み
___ 線の読み仮名を書きなさい。
① 
答え
むらさき
② 
答え
ほたる
③ 
答え
おもむき
④ 
答え
⑤ 
答え
しも
⑥ ける
答え
かたむ
⑦ 水晶
答え
すいしょう
2
重要語句
正しい意味を下から選び、線で結びなさい。
① あけぼの
答え
ウ 明け方。
ア 早朝
② さらなり
答え
イ 言うまでもない。
イ 言うまでもない。
③ をかし
答え
エ 趣がある。
ウ 明け方。
④ つとめて
答え
ア 早朝
エ 趣がある。
⑤ つきづきし
答え
オ 似つかわしい。
オ 似つかわしい。
3
基本問題
「枕草子」を説明した次の文の (  ) に当てはまる言葉を後から選び、書きなさい。
「枕草子」は ①(  ) 時代に成立した ②(  ) で、作者は ③(   )
鎌倉 平安 紫式部 清少納言 物語 随筆 軍記物語

答え
平安

答え
随筆

答え
清少納言

2
ぴたトレ 練習
枕草子
清少納言
p.27
1. 文章を読んで、問いに答えなさい。
春はあけぼの。ⓐやうやう白くなりゆくⓑ山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり、闇もⓒなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもⓓをかし。雨など降るもをかし。

現代語訳
春は明け方。だんだんと白んでいく山ぎわが、少し明るくなって、紫がかった雲が細くたなびいている(のは風情がある)。
夏は夜。月の頃は言うまでもないが、闇もやはり、蛍が多く飛びかっている(のがよい)。また、ほんの一、二匹ほのかに光って飛んでいくのも趣がある。雨などが降るのもいい。
(1) ――― 線ⓐ〜ⓓの歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直し、全て平仮名で書きなさい。
答え
ⓐ ようよう
ⓑ やまぎわ
ⓒ なお
ⓓ おかし
【解説】
「やうやう」は「ようよう」、「山ぎは」は「山ぎわ」、「なほ」は「なお」、「をかし」は「おかし」と直します。母音の「au」と、語頭以外のハ行の音に注意します。

(2) ――― 線「ほのかにうち光りて行く」の主語は何ですか。次から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 月
イ 蛍
ウ 雨
答え

【解説】
直前に「蛍の多く飛びちがひたる」とあるので、「ほのかにうち光りて行く」の主語も蛍です。

(3) 作者は、「春」と「夏」で、それぞれどの時間帯がよいと考えていますか。現代語訳の中の言葉で答えなさい。
答え
春 明け方
夏 夜
【解説】
本文の「春はあけぼの」は、現代語訳では「春は明け方」です。「夏は夜」はそのまま「夏は夜」と訳されています。作者が好ましいと思った時間帯を答えます。