国語教科書 128ページ 「言葉」をもつ鳥、シジュウカラ

教科書
「言葉」をもつ鳥、シジュウカラ   鈴木俊貴

桜が咲く頃、「ツツピー、ツツピー」と響き渡る美しい鳥のさえずり。
その声の主はシジュウカラです。
黒い頭に白い頬、胸から腹にかけてのネクタイ模様が特徴の、スズメほどの大きさの小鳥です。
北海道から沖縄まで日本列島に広く分布し、街中にも姿を現すので、見覚えのある人もいることでしょう。
よく耳を澄ますと、シジュウカラの鳴き声には、さまざまな種類があることに気がつきます。
「ピーツピ」「チッチッ」「ヂヂヂヂヂ」……。
シジュウカラは、他の種類の鳥と比べても、鳴き声のレパートリーが非常に豊富です。
私は、こうした鳴き声にはそれぞれ意味があり、それら全体でシジュウカラの「言葉」になっていると考え、研究をしています。
シジュウカラは、春のおとずれとともに繁殖期を迎えます。
木のうろなどにこけを運んで巣を作り、毎朝一つずつ、合計六個から十三個ほどの卵を産みます。
ひながかえると、つがいで協力して青虫などの餌を巣に運び、子育てをします。
私は二〇〇五年から毎年、長野県軽井沢町のとある森に巣箱を掛けて、繁殖したシジュウカラの様子を観察してきました。
二〇〇八年六月のある日、研究の転機がおとずれました。
いつものように観察に向かうと、シジュウカラの巣箱にアオダイショウが迫り、ひなを食べようとしているところに出くわしたのです。
そのとき、親鳥はヘビに接近し、翼を広げて威嚇しながら、けたたましく「ジャージャー」と鳴いていました。
それまで、朝から夕方までシジュウカラを観察してきましたが、こんな鳴き声を聞いたのは初めてでした。
シジュウカラの卵やひなを襲う天敵には、ヘビの他にカラスやネコ、イタチ類が挙げられます。
親鳥は、これらの天敵には「ピーツピ」と鳴くのに対し、ヘビにだけは「ジャージャー」と鳴いていたのです。
鳴き声を録音し、コンピュータで分析してみても、その違いは明らかでした。
私は、これらの観察から、シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声が、警戒すべき対象としての「ヘビ」を意味する「単語」になっているのではないかという仮説を立てました。
ここでの「単語」とは、「ヘビ」や「タカ」といった異なる意味を伝える一つ一つの鳴き声だと定義することにします。
では、シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す「単語」であるかどうかを調べるには、どうすればよいのでしょうか。
鳴き声を発する状況を記録するのはもちろんですが、それだけでは意味を確かめることはできません。
ヘビの存在をつがい相手に伝えるために「ジャージャー」と鳴いているのか、それとも単なる恐怖心から鳴き声を発しているのかが区別できないからです。
そこで私は、鳴き声を聞いたシジュウカラが、どのように振る舞うのかを詳しく調べてみることにしました。
もし「ジャージャー」という鳴き声がヘビを意味する「単語」であるならば、それを聞いたシジュウカラはヘビを警戒するようなしぐさを示すかもしれないと考えたのです。
まず、あらかじめ録音しておいた「ジャージャー」という鳴き声を基に、三分の長さの音声ファイルを作成しました。
シジュウカラのつがいのうち一羽が、ヘビを見つけてくり返し「ジャージャー」と鳴いている状況をまねたのです。
そして、その音声をヘビのいない状況でスピーカーから流して聞かせ、シジュウカラの行動変化を観察しました。
シジュウカラは、「ジャージャー」という鳴き声を聞くと、巣箱が掛かった木の周辺で地面をじっと見下ろしたり、時には巣箱の穴をのぞいたり、普段とは明らかに異なるしぐさを示しました(グラフ1)。
いっぽう、カラスやネコなどを警戒するときの「ピーツピ」という鳴き声を聞かせても、これらの行動は見られず、首を左右に振り、周囲を警戒するだけでした(グラフ2)。
また、鳴き声を流さない場合には、どのような種類の警戒行動もほとんど示しませんでした(グラフ3)。
ヘビは地面から木をはい上り、巣箱に侵入して卵やひなを襲います。
親鳥が卵やひなを守るためには、ヘビをいち早く見つけ出し、追い払わなければなりません。
「ジャージャー」という鳴き声を聞いて地面や巣箱を確認しに行くことは、親鳥がヘビの居場所をつき止めるうえで大いに役立つと考えられます。
しかし、この実験結果から、シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す「単語」であると、十分に主張できるでしょうか。
もしかしたら、「ジャージャー」という鳴き声は、「地面や巣箱を確認しろ。」といった命令であり、それを聞いたシジュウカラはヘビの姿をイメージすることなく、それらの行動を取ったのかもしれません。
そこで今度は、「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラが、実際にヘビの姿をイメージしているのか検証しようと考えました。
私たちの場合、語から得たイメージによって、物の見え方が変わってしまうことがあります。
例えば、道路に落ちた木の枝でも、誰かがそれを指して「ヘビだ!」と言ったら、周りの人は思わず身構えることでしょう。
これは、「ヘビ」という単語からその姿をイメージし、枝を一瞬、本物のヘビと見間違えてしまうからです。
同じように、シジュウカラにも見間違いが観察されれば、「ジャージャー」という鳴き声からヘビの姿をイメージした証拠になると考えられます。
実験の手順は、以下のとおりです。
まず、二十センチメートルほどの長さの小枝にひもを付け、木の幹に沿うようにぶら下げます。
そして、スピーカーから「ジャージャー」という鳴き声を流します。
そのうえで、遠くからひもをゆっくりと引き、まるで幹をはい上るヘビのように小枝を動かしました(図)。
すると、「ジャージャー」という鳴き声を聞かせたシジュウカラは、ヘビのように動く小枝に近づき、確認することがわかりました。
いっぽう、「ジャージャー」以外の鳴き声を聞かせた場合、小枝に接近するシジュウカラはほとんどいませんでした(グラフ4)。
また、「ジャージャー」という鳴き声を聞かせながら、小枝を大きく左右に揺らし、ヘビに似ていない動きとして見せた場合も、同様の結果となりました(グラフ5)。
つまり、シジュウカラは、「ジャージャー」という鳴き声から幹をはうヘビの姿をイメージし、それに似た動きをする小枝をヘビと見間違えたのだと解釈できます。
二つの実験の結果から、「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラはヘビの姿をイメージし、そのうえで、ヘビを探す際に役立つ特別な行動を取ることがわかりました。
ここから、「ジャージャー」という鳴き声は「ヘビ」を意味する「単語」であると結論づけられます。
研究者の間では、長年にわたって、「言葉」をもつのは人間だけだと信じられてきました。
動物の鳴き声は、「怒り」や「喜び」といった単なる感情の表れであり、物の存在や出来事を伝える「単語」ではないと考えられてきたのです。
そのため、動物の鳴き声に関する詳細な研究は、これまで十分に進められてきませんでした。
しかし、今回の研究で、身近な小鳥のシジュウカラにもヘビを示す「単語」があり、つがいが協力してヘビを追い払ううえで役立っていることがわかりました。
木をはい上り巣箱に侵入するヘビは、小鳥にとって特別な脅威です。
シジュウカラは、卵やひなを守るために、ヘビの存在を示す特別な鳴き声を進化の過程で獲得したと考えられます。
シジュウカラの世界に魅了された私は、今でも毎年長野県の森に通って研究を続けています。
二十年以上にわたる野外研究の中で、彼らが異なる「単語」を使い分けるだけでなく、それらを組み合わせてより複雑なメッセージを伝えていることなどもわかってきました。
人間以外に、複数の「単語」を組み合わせる能力が実証されたのは、シジュウカラが初めてです。
今後、動物の鳴き声に関する研究が盛んになることで、シジュウカラ以外にも、「言葉」をもつ動物の存在が明らかになるかもしれません。
人間が最も高度な生物であると決めつけることなく、じっくり動物たちを観察してみると、まだまだ驚きの発見があるのだと思います。
スタディサプリ

確認テスト 1

Q1. 「研究の転機」とは何か。最も適当なものを、次のア~エから一つ選びなさい。
ア 天敵に対して、シジュウカラのひなが「ピーツピ」と鳴くのを聞いたこと。
イ 天敵に対して、シジュウカラの親鳥が「ピーツピ」と鳴くのを聞いたこと。
ウ ヘビに対して、シジュウカラの親鳥が「ピーツピ」と鳴くのを聞いたこと。
エ ヘビに対して、シジュウカラの親鳥が「ジャージャー」と鳴くのを聞いたこと。
答え

【解説】 本文では、巣箱に近づいたヘビに対して、 親鳥がこれまで聞いたことのない「ジャージャー」という鳴き声で威嚇している場面が書かれています。 この出来事がきっかけとなって、 「鳴き声には意味があるのではないか」と筆者は考えるようになりました。 そのため、研究の転機にあたるのはエです。

Q2. 次の天敵に対して、シジュウカラはそれぞれ何と鳴きますか。①~④に当てはまる鳴き声を答えなさい。
① カラス ② ヘビ ③ ネコ ④ イタチ類
答え
① ピーツピ
② ジャージャー
③ ピーツピ
④ ピーツピ
【解説】 本文では、 ヘビに対してだけ「ジャージャー」、 それ以外の天敵(カラス・ネコ・イタチ類)に対しては **「ピーツピ」**という鳴き声を出していることが説明されています。 この違いが、鳴き声に意味があると考える根拠になっています。

Q3. 次の文が、筆者が立てた仮説となるように、解答欄に入る言葉を本文中からそれぞれ書きぬきなさい。
「シジュウカラの『   』という鳴き声は、『   』を意味する。」
答え
「ジャージャー」 「ヘビ」
【解説】 筆者は観察と録音・分析を通して、 「ジャージャー」という鳴き声が、 警戒すべき対象としてのヘビを知らせる“単語”のような役割をしているのではないか、 という仮説を立てました。 ここが、文章全体の一番大事なポイントです。

確認テスト 2

Q1. 第8段落で述べられていることとして、最も適当なものを次のア~エから一つ選びなさい。
ア 検証の目的
イ 検証の問題点
ウ 実験・観察の結果
エ 結果に対する解釈・考察
答え

【解説】

Q2. 地面を確認したシジュウカラは、次の①~③の場合、それぞれ何羽でしたか。グラフを参考にして、算用数字で答えなさい。
①「ジャージャー」という鳴き声を聞かせた場合
②「ピーツピ」という鳴き声を聞かせた場合
③ 鳴き声を流さなかった場合
答え
① 10羽
② 5羽
③ 5羽
【解説】 グラフを見ると、 「ジャージャー」を聞いたときだけ、地面を確認する行動が多く見られることが分かります。 これは、ヘビが地面からはい上ってくるため、 その居場所を探そうとしている行動だと考えられます。

Q3. シジュウカラが「左右を警戒する」という反応を最も多く示したものを、次のア~ウから一つ選びなさい。
ア 「ジャージャー」という鳴き声を聞かせた場合
イ 「ピーツピ」という鳴き声を聞かせた場合
ウ 鳴き声を流さなかった場合
答え

【解説】 「ピーツピ」は、カラスやネコなどの空や周囲から来る天敵への警戒を表す鳴き声です。 そのため、地面ではなく、左右や周囲を警戒する行動が多くなっています。 このことから、イが正解です。

Q4. 次の文が、検証の結果に対する筆者の考察となるように、解答欄に入る言葉を本文中から書きぬきなさい。
「ヘビは(   )から木をはい上り、巣箱に侵入して卵やひなを襲うので、 『ジャージャー』という鳴き声を聞いた場合のシジュウカラの行動は、 親鳥がヘビの(   )をつき止めるのに役立つと考えられる。」
答え
地面
居場所
【解説】 本文では、 ヘビは地面から木をはい上ってくるため、 親鳥はまず地面や巣箱の周辺を確認する必要があると説明されています。 「ジャージャー」という鳴き声によって、 ヘビの居場所を探す行動が引き出されている、というのが筆者の考察です。

確認テスト 3

Q1. 第12~14段落で述べられていることとして、最も適当なものを次のア~オからそれぞれ選びなさい。
ア 観察の手順・検証の目的
イ 検証の問題点
ウ 実験・観察の結果
エ 実験の手順
オ 結果に対する解釈・考察
答え
12:エ
13:ウ
14:オ
【解説】 第12段落では、小枝をヘビのように動かす方法や鳴き声を流す手順が説明されているため「実験の手順」。 第13段落では、小枝に近づいたかどうかという結果が示されているため「実験・観察の結果」。 第14段落では、その結果からヘビをイメージして行動していると考える説明があるため「結果に対する解釈・考察」です。

Q2. ヘビに似た動きをする小枝を見せながら、次の鳴き声を聞かせた場合、小枝に近づく反応を示したシジュウカラが最も多かったものはどれですか。記号で答えなさい。
ア 「ジャージャー」
イ 「ピーツピ」
ウ 「ヂヂヂヂヂ」
答え

【解説】 グラフを見ると、「ジャージャー」を聞かせた場合に、 シジュウカラがヘビに似た動きをする小枝に最も多く近づいています。 これは、この鳴き声がヘビを知らせる意味をもっていることを示しています。

Q3. ヘビに似ていない動きの小枝を見せながら「ジャージャー」という鳴き声を聞かせた場合、小枝に近づいたシジュウカラは全十二羽中何羽でしたか。グラフを参考に、算用数字で答えなさい。
答え
0羽
【解説】 小枝がヘビに似ていない動きをしているときは、 「ジャージャー」を聞かせても、シジュウカラはほとんど近づきません。 鳴き声だけでなく、動きの様子も合わせて判断していることが分かります。

Q4. 本文の内容に合うものを、次のア~エから一つ選びなさい。
ア 筆者は、実験の手順として、小枝を大きく左右に揺らし、幹をはい上がるヘビに見えるようにした。
イ 「ジャージャー」以外の鳴き声を聞かせた場合でも、ヘビに似ている動きなら、シジュウカラはあまり近づかなかった。
ウ 「ジャージャー」を聞かせた場合、ヘビに似ていない小枝にも、ほとんどのシジュウカラが接近した。
エ 実験の結果から、シジュウカラがヘビをイメージしているとは解釈できない。
答え

【解説】 本文では、 「ジャージャー」以外の鳴き声を聞かせた場合、 たとえ動きがヘビに似ていても、シジュウカラは小枝に近づかなかったとあります。 そのため、正しい内容はイです。

確認テスト 4

Q1. 「1 仮説の検証」について正しく述べたものを、次のア~エから一つ選びなさい。
ア 筆者は、ヘビを見たシジュウカラが「ジャージャー」という鳴き声を発するかどうかを調べた。
イ 「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラは、左右を警戒する行動を最も多く示した。
ウ 「ジャージャー」という鳴き声を聞いた後のシジュウカラの行動は、ヘビの居場所をつき止めるのに役立つと考えられる。
エ 結論に説得力をもたせるために、筆者は2つの検証を行ったが、1つ目の検証だけでも仮説を十分に証明できた。
答え

【解説】 1つ目の検証では、鳴き声を聞いたシジュウカラが地面や巣箱を確認する行動を示すことが確かめられました。 これは、ヘビの居場所を見つけるのに役立つ行動だと筆者は考えています。 その内容を正しくまとめているのがウです。

Q2. 「2 仮説の検証」について正しく述べたものを、次のア~エから一つ選びなさい。
ア 検証の目的は、「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラが、ヘビの姿をイメージしているかどうかを調べることである。
イ 検証では、ヘビを見せながら三種類の鳴き声を聞かせ、それぞれの場合の反応の違いを観察した。
ウ 「ジャージャー」という鳴き声を聞くと、シジュウカラはどのような動きの小枝にも近づくことが分かった。
エ 検証の結果、シジュウカラの親鳥は、動く小枝をヘビとよく見間違えることが確かめられた。
答え

【解説】 2つ目の検証では、 「ジャージャー」を聞いたシジュウカラが、頭の中でヘビの姿を思い浮かべているかを確かめるため、 ヘビに似た動きをする小枝を使った実験が行われました。 その目的を正しく表しているのがアです。

Q3. 1つ目と2つ目の検証の結果から分かったこととして、最も適当なものを次のア~ウから一つ選びなさい。
ア 「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラは、ヘビの姿をイメージしている。
イ 「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラは、ヘビを探す際に役立つ特別な行動を取る。
ウ 「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラは、ヘビをイメージすることなく警戒行動を取っている。
答え

【解説】 1つ目の検証からは、 「ジャージャー」を聞くとヘビの居場所を探す行動を取ることが分かりました。 さらに2つ目の検証では、 ヘビに似た動きをする小枝に近づくことから、 シジュウカラがヘビの姿をイメージして行動していると考えられます。 この両方をまとめた答えがアです。

例題 鳴き声を聞かせて行動変化を観察

では、①シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す「単語」であるかどうかを調べるには、どうすればよいのでしょうか。
鳴き声を発する状況を記録するのはもちろんですが、それだけでは意味を確かめることはできません。
ヘビの存在をつがい相手に伝えるために「ジャージャー」と鳴いているのか、それとも単なる恐怖心から鳴き声を発しているのかが区別できないからです。
そこで私は、鳴き声を聞いたシジュウカラが、どのように振る舞うのかを詳しく調べてみることにしました。
もし「ジャージャー」という鳴き声がヘビを意味する「単語」であるならば、それを聞いたシジュウカラはヘビを警戒するようなしぐさを示すかもしれないと考えたのです。
まず、あらかじめ録音しておいた「ジャージャー」という鳴き声を基に、三分の長さの音声ファイルを作成しました。
シジュウカラのつがいのうち一羽が、ヘビを見つけてくり返し「ジャージャー」と鳴いている状況をまねたのです。
そして、その音声をヘビのいない状況でスピーカーから流して聞かせ、②シジュウカラの行動変化を観察しました。
シジュウカラは、「ジャージャー」という鳴き声を聞くと、巣箱が掛かった木の周辺で地面をじっと見下ろしたり、時には巣箱の穴をのぞいたり、普段とは明らかに異なるしぐさを示しました(グラフ1)。
いっぽう、カラスやネコなどを警戒するときの「ピーツピ」という鳴き声を聞かせても、これらの行動は見られず、首を左右に振り、周囲を警戒するだけでした(グラフ2)。
また、鳴き声を流さない場合には、どのような種類の警戒行動もほとんど示しませんでした(グラフ3)。
ヘビは地面から木をはい上り、巣箱に侵入して卵やひなを襲います。
親鳥が卵やひなを守るためには、ヘビをいち早く見つけ出し、追い払わなければなりません。
「ジャージャー」という鳴き声を聞いて地面や巣箱を確認しに行くことは、親鳥がヘビの居場所をつき止めるうえで大いに役立つと考えられます。

問題
シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す「単語」であるかどうかを調べるには、どうすればよいのでしょうか。

1⃣     線①について答えなさい。
(1) 筆者が、「ジャージャー」という鳴き声を発する状況を記録するだけではだめだと考えたのは、なぜですか。
ヘビの存在を伝えているのか、単なる(    )で鳴いているのかが区別できないから。
答え
恐怖心

解説
鳴き声を発する状況を記録するだけでは意味( = ヘビを示す「単語」)を確かめることができない理由は、「~からです。」という形で説明されている。

(2) よく出る  筆者はどうすることにしましたか。
「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラが、どのように(   )のかを詳しく調べること。
答え
振る舞う

解説
(1)の不備を補う方法として、「鳴き声を聞いたシジュウカラが、どのように振る舞うのかを詳しく調べてみることにしたと述べている。

2⃣  筆者は、「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラはどうすると考えましたか。
ヘビを(   )するようなしぐさを示す。
答え
警戒

解説
「『ジャージャー』 = ヘビを意味する『単語』」という仮説が正しければ、シジュウカラはヘビを警戒するだろうと考えている。

シジュウカラの行動変化を観察しました。


3⃣ よく出る      線②とありますが、次の場合、シジュウカラはどうしましたか。
後のア~ウから選びなさい。
① 「ジャージャー」という鳴き声を聞かせた場合。
② 「ピーツピ」という鳴き声を聞かせた場合。
③ 鳴き声を流さなかった場合。

ア 警戒行動をほとんど示さなかった。
イ 巣箱のある木の周辺で地面を見下ろしたり、巣箱の穴をのぞいたりした。
ウ 左右に首を振り、周囲を警戒するだけだった。
答え
①:イ
②:ウ
②:ア

解説
    線②の直後の段落に観察の結果がまとめられている。
「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラは、「巣箱が掛かった木の周辺で地面をじっと見下ろしたり、時には巣箱の穴をのぞいたり」したとある。
特別な警戒行動を示したのである。
そのいっぽう、「ピーツピ」という鳴き声を聞いたシジュウカラは、「首を左右に振り、周囲を警戒するだけ」とある。
また、「鳴き声を流さない場合には、どのような種類の警戒行動もほとんど示しませんでした」とある。

4⃣ 「ジャージャー」という鳴き声を聞いたときのシジュウカラの行動は、どのようなことに役立ちますか。
(       )をつき止めて、卵やひなを守ること。
答え
ヘビの居場所

解説
「『ジャージャー』という鳴き声を聞いて地面や巣箱を確認しに行くことは、親鳥がヘビの居場所をつき止めるうえで大いに役立つ」とある。

例題 鳴き声+小枝の実験で仮説を検証

しかし、①この実験結果から、シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す「単語」であると、十分に主張できるでしょうか。
もしかしたら、「ジャージャー」という鳴き声は、「地面や巣箱を確認しろ。」といった命令であり、それを聞いたシジュウカラはヘビの姿をイメージすることなく、それらの行動を取ったのかもしれません。
そこで今度は、「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラが、実際にヘビの姿をイメージしているのか検証しようと考えました。
私たちの場合、語から得たイメージによって、物の見え方が変わってしまうことがあります。
例えば、道路に落ちた木の枝でも、誰かがそれを指して「ヘビだ!」と言ったら、周りの人は思わず身構えることでしょう。
これは、「ヘビ」という単語からその姿をイメージし、枝を一瞬、本物のヘビと見間違えてしまうからです。
同じように、シジュウカラにも見間違いが観察されれば、「ジャージャー」という鳴き声からヘビの姿をイメージした証拠になると考えられます。
実験の手順は、以下のとおりです。
まず、二十センチメートルほどの長さの小枝にひもを付け、木の幹に沿うようにぶら下げます。
そして、スピーカーから「ジャージャー」という鳴き声を流します。
そのうえで、遠くからひもをゆっくりと引き、まるで幹をはい上るヘビのように小枝を動かしました(図)。
すると、「ジャージャー」という鳴き声を聞かせたシジュウカラは、ヘビのように動く小枝に近づき、確認することがわかりました。
いっぽう、「ジャージャー」以外の鳴き声を聞かせた場合、小枝に接近するシジュウカラはほとんどいませんでした(グラフ4)。
また、「ジャージャー」という鳴き声を聞かせながら、小枝を大きく左右に揺らし、ヘビに似ていない動きとして見せた場合も、同様の結果となりました(グラフ5)。
つまり、シジュウカラは、「ジャージャー」という鳴き声から幹をはうヘビの姿をイメージし、それに似た動きをする小枝をヘビと見間違えたのだと解釈できます。
二つの実験の結果から、「ジャージャー」という鳴き声を聞いたシジュウカラはヘビの姿をイメージし、そのうえで、ヘビを探す際に役立つ特別な行動を取ることがわかりました。
ここから、「ジャージャー」という鳴き声は「ヘビ」を意味する「単語」であると結論づけられます。
研究者の間では、長年にわたって、「言葉」をもつのは人間だけだと信じられてきました。
動物の鳴き声は、「怒り」や「喜び」といった単なる感情の表れであり、物の存在や出来事を伝える「単語」ではないと考えられてきたのです。
そのため、動物の鳴き声に関する詳細な研究は、これまで十分に進められてきませんでした。
しかし、③今回の研究で、身近な小鳥のシジュウカラにもヘビを示す「単語」があり、つがいが協力してヘビを追い払ううえで役立っていることがわかりました。
木をはい上り巣箱に侵入するヘビは、小鳥にとって特別な脅威です。
シジュウカラは、卵やひなを守るために、ヘビの存在を示す特別な鳴き声を進化の過程で獲得したと考えられます。

問題
この実験結果から、シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す「単語」であると、十分に主張できるでしょうか。

1⃣      線①「この実験結果から、シジュウカラの…………十分に主張できるでしょうか」について答えなさい。
(1) 筆者が、こうした疑問をもったのは、なぜですか。
□に当てはまる言葉を、文章中から二字で抜き出しなさい。
「ジャージャー」という鳴き声は、ヘビを示す「単語」ではなく、行動を起こさせるための(□□)である可能性もあるから。
答え
命令

解説
(1)直後の「もしかしたら」に着目する。
「単語」ではなく、単なる「命令」である可能性もあると述べている。

(2) よく出る  そこで筆者は、「ジャージャー」という鳴き声がヘビを示す「単語」であることを証明するため、どのような仮説を立てましたか。
文章中から一文で抜き出し、初めの五字を書きなさい。
答え
同じように

解説
「ジャージャー」という鳴き声を聞かせ、小枝をヘビのように動かしたときに、シジュウカラはヘビを確認するような反応を見せたのである。

実験

2⃣      線②「実験」について答えなさい。
(1) 実験の正しい手順になるように記号で答えなさい。
ア 小枝にひもを付けて、木の幹に沿うようにぶら下げる。
イ 遠くからひもを引いて、小枝をヘビのように動かす。
ウ スピーカーから「ジャージャー」という鳴き声を流す。
エ 二十センチメートルほどの長さの小枝を用意する。
答え
エ → ア → ウ → イ

(2) よく出る  実験を、次のように①・②に分けた場合、それぞれの結果を後から一つずつ選び、記号で答えなさい。
① シジュウカラに「ジャージャー」という鳴き声を聞かせながら、小枝をヘビのように動かしたとき。
② シジュウカラに「ジャージャー」以外の鳴き声を聞かせながら、小枝をヘビのように動かしたとき。
ア 小枝から遠くへにげようとした。
イ 小枝に接近するものは、ほとんどいなかった。
ウ 聞いていたシジュウカラが、「ジャージャー」と鳴いた。
エ 小枝の動きを止めようとした。
オ 小枝に近づいて確認した。
答え
①:オ ②:イ 「ジャージャー」という鳴き声を聞かせ、小枝をヘビのように動かしたときに、シジュウカラはヘビを確認するような反応を見せたのである。

(3) 実験の結果について、筆者はどのように解釈しましたか。 それがわかる部分を文章中から六十字で抜き出し、初めと終わりの五字を書きなさい。
答え
シジュウカ ~ 見間違えた

解説
「つまり」から始まる段落に、解釈が述べられている。

今回の研究

3⃣ よく出る      線③「今回の研究」について答えなさい。
(1) 今回の研究でわかったことを、「ジャージャー」という言葉を使って書きなさい。
答え
シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声は「ヘビ」を示す「単語」で、ヘビを追い払ううえで役立っていること。

解説
「今回の研究で・・・・・・がわかりました」とあることに着目し、「ジャージャー」という言葉を使ってまとめる。

(2) 筆者の考えを次から一つ選び、記号で答えなさい。
ア シジュウカラの「ジャージャー」という鳴き声は、ヘビを威嚇する効果もあると考えられる。
イ 動物の「言葉」は、危険を知らせるための手段として発達してきたと考えられる。
ウ シジュウカラは、卵やひなを守るため、進化の過程で特別な鳴き声を獲得したと考えられる。
エ 動物の鳴き声は、感情の表れであり、「言葉」ではないと考えられる。
答え


解説
今回の研究でわかったことについて筆者は、シジュウカラがヘビの脅威に備えるために、「特別な鳴き声を進化の過程で獲得した」と考えている。

漢字

Q1. 寒い風にあたって、ほおが赤くなった。
答え

Q2. 小学生のころ、よく公園で遊んでいた。
答え

Q3. 鳥は春になるとはんしょくきをむかえる。
答え
繁殖期

Q4. 動物園では、決まった時間にえさをあたえている。
答え

Q5. テストの日がせまってきた。
答え
迫る

Q6. 猫が背中を丸めて相手をいかくした。
答え
威嚇

Q7. 集めたデータをぶんせきして結果をまとめた。
答え
分析

Q8. 知らない人に対してけいかい心をもつ。
答え
警戒

Q9. その場のじょうきょうをよく見て行動した。
答え
状況

Q10. お客さんに親切にふるまった。
答え
振る舞

Q11. カラスを大きな声でおいはらった。
答え
追い払

Q12. その事実を示すしょうこが見つかった。
答え
証拠

Q13. 同じ文章でも、人によってかいしゃくがちがう。
答え
解釈

Q14. 強いいかりを感じた。
答え
怒り

Q15. 台風は人々にとって大きなきょういとなる。
答え
脅威

Q16. 努力して優勝をかくとくした。
答え
獲得

Q17. その映画は多くの人をみりょうした。
答え
魅了

Q18. 室町時代になると商工業がさかんになりました。
答え
盛ん

Q19. 予想外の出来事におどろいた。
答え